ガバナーメッセージ
このたび、国際ロータリー第2640地区ガバナーの重職を賜ることになり、我が地区の先達が残した卓越した功績を前にして、あらためて身の引き締まる思いであります。もとより浅学非才の身でありますが、皆さまとともにより良い地区を目指して一層の精進を重ねて参る所存です。クラブ会長、役員はじめ会員の皆様には、さらなるご支援を賜れるようお願い申し上げます。
今、世界は理想と現実の乖離に悩んでいるように見えます。かつて、東西冷戦の終焉を意味するベルリンの壁崩壊によって、世界は「グローバル化」を掛け声に、対立の時代を脱し、平和の配当を享受できるのではないかという、かつてない大きな期待に胸を膨らませました。しかし、30年を経ての現実は、テロやナショナリズムに見られるような分散化と多極化の流れにあり、依然、平和とは程遠い紛争と貧困に悩んでいるのです。高度に発達させたはずの財政や金融技術も、バブル破綻やリーマンショックのように、時として経済危機の引き金となったことは記憶に新しいところです。夢の技術が、使い方によっては破滅への道具に成り得るという皮肉な現実は、なにもダイナマイトや核、化石燃料の大量消費などの例を引くまでもないでしょう。わが国は、このような国際的環境に加え、少子高齢化、過疎と過密、市場の縮小など独自の課題を多く抱えて閉塞感が漂うばかりです。地方はより厳しく、私たちに出来ることは、ただ現実への対処に力を尽くすだけかのように思えてきます。
しかし、このようなときだからこそ、失ってはいけないことがあります。社会学者マックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で予見した「精神の無い専門人、心情の無い享楽人」の跋扈という悪夢を例に引くまでもなく、理想を持つことです。ウェーバーは、理想ばかりではいけないが、現実にのみ追随することのむなしさを説きました。持つべきは、現実を直視し、そのなかで確信するに至った理想を胸に、現実に真正面から立ち向かい、挫けることなく、少しでも世の中を変えていこうとする姿勢です。
私たちは「奉仕の団体」であり、「奉仕の理想」と共にあると教えられてきました。この「奉仕の理想(The ideal of service)」について、分かりやすく説明しているものに、国際ロータリーの初代事務総長チェスリー・ペリーが残した文章があります。「どのロータリークラブにおいても、思いやりをもって人に尽くすことが奉仕の理想という基本理念を持っている(Rotary clubs everywhere have one basic ideal-the ideal of service which is thoughtfulness and helpfulness to others.)」。
さらに、ロータリー並びにロータリアンは、その理念(ideal)に併せて「行動」することが、(決議23-34 第4条によって)奨励されていることも大事なポイントです。黎明期にあったシカゴの公衆トイレ建設からポリオ撲滅運動に至るまで、ロータリーはいかに行動する団体であったのか、行動する個人の集まりであったのかを思い出して下さい。私たちは現実に挫けることなく、奉仕の理想という理念を胸に行動を起こしてきたのです。
紛争と貧困に悩む国際社会、閉塞感が支配する地域社会、それでも、それぞれの描く「理想」の社会を目指して、愚直にも「良いこと」を実践しようとする原動力は存在するものです。皆さまの街においても同様です。そして、できれば、そのひとつはロータリークラブであって、そのひとりはロータリアンであってもらいたいと思います。「思いやりをもって、人に尽くす」をロータリーの使命と心得て、地域に評価を頂ける地区を築くために精一杯努力を致す所存です。重ねて皆様のご支援とご協力をお願い申し上げます。
基本方針
スローガン「ロータリークラブを楽しもう」
我が国のロータリークラブ会員の減少が問題となっています。1996年のピーク時には約13万人であったのが、現在は約9万人と3割以上の減少となっているからです。しかし、当地区においてはさらに深刻で、1996年に比べると会員数は半減しているのです。情熱を注がれ歴史を重ねてきたクラブでさえ、惜しいことに会員減少が理由でいくつも失ってきました。会員増強や退会防止に、即効性、特効性のある処方はないかも知れません。しかし有効だと思われるすべての手段を投入したとしても、その価値はあろうかと思います。
ただ、処方に知恵を出し合うにしても、会員であることの「楽しみ」がなければ、当人には会員であることの魅力はありません。根本は、ロータリークラブを楽しめるか、楽しめないかにあるのではないでしょうか。ロータリークラブの楽しみ方は、それこそ無限。しかし、会員がその楽しみ方に出会えるかどうかは組織のあり方次第です。
活動方針に沿って皆さまへのお願い
①会員減少への歯止めには、まずは会員のロータリーへの理解を深めて頂くとともに、社会での役割を確認することから初めて頂きたいと思います。クラブでは、各種奉仕活動の柱をしっかりと立て、実際に会員に奉仕の経験を頂くことで、クラブ会員としての喜びを感じる機会を作っていきましょう。
②クラブ事業が地域社会に認知されるものであれば、クラブそのものの認知度も上がり、会員としての誇りもより強く感じられることでしょう。このように公共イメージの向上には、副産物として会員増強、退会防止としての側面があるものです。国際ロータリーでは、ロータリーデーイベントの開催を勧めています。
③クラブ内での活動は、会員にとって、かけがいのない喜びや感動を味わうことのできる大事な場です。しかし、ひとつのクラブで行っているものを、他の、あるいはいくつかのクラブと共同でできる機会があれば、また新たな局面も生まれるものです。さらに国境を越えて繋がれば、感動もさらに高まることでしょう。ロータリー財団を利用することによって、新たなやりがい、喜びや感動を得る機会があります。地区では、国際奉仕委員会とロータリー財団委員会とのコラボレーションを図ります。国際奉仕に関心があり、ロータリー財団の補助金対象になりそうなら、まずは国際奉仕委員会にご相談下さい。
④世界には3万5千を超えるロータリークラブと120万人の会員が存在し、それぞれが立派に活動をしているからこそ世界的名声があります。また、ポリオ撲滅運動の現場は日本にはありませんが、その支援をすべてのクラブが行っています。このように一つひとつのクラブでの活動から、距離は離れていてもポリオ撲滅運動のような人類史に残るような大規模な活動に至るまで、そのすべてがロータリーの活動であり、その成果は一ロータリアンとしても共有できるのです。各クラブの会長はじめ役員の皆様には、クラブ会員とともに、国際ロータリーが提供するロータリアンの為のホームページ「My Rotary」で、この成果を共有頂きたいと思います。先ずは世界のロータリアンと繋がりましょう。
⑤世界と繋がる、それはもちろん国際ロータリーと各クラブとも繋がっていることを意味します。各クラブでは、是非、「Rotary Club Central」ですべての項目を埋めて頂き、国際ロータリーのデータ収集にご協力頂きたいと思います。また、国際ロータリーからクラブに与えられる「ロータリー賞」は、「Rotary Club Central」からのお申込みになりますので、くれぐれも各項目の書き込みをお忘れのないようにお願い致します。
⑥既に述べたように、ロータリーはポリオ撲滅運動に取り組んでいます。またそれぞれのクラブが取り組める地区補助金やグローバル補助金の原資はロータリー財団が担っています。34の地区を持つ日本のロータリーが、2016-2017年度において、ロータリー財団寄付ゼロクラブの「ゼロ」を達成し、世界の注目を浴びました。当該年度も達成できるように各クラブのご理解とご協力を心よりお願い致します。
⑦ロータリー財団寄付金については、今年度と同額の目標額を設定させて頂きます。各クラブのご理解とご協力をお願い致します。
ロータリー財団寄付金、一人当たり200ドルとポリオ・プラス10ドルをお願い致します。
⑧米山記念奨学会寄付金については、今年度と同額の目標を設定させて頂きます。各クラブのご理解とご協力をお願い致します。一人当たり普通寄付金6,000円に加えて、特別寄付金を9,000円、合計15,000円です。
⑨未来の担い手である青少年への奉仕は、今の時代においてさらに重要性を増している分野です。青少年奉仕におけるロータリーのプログラムとして、ローターアクト、インターアクト、ロータリー青少年指導者養成プログラム(RYLA)、ロータリー青少年交換があり、いずれも青少年や若い世代の社会人がリーダーシップ能力を伸ばせるよう支援することが目的です。
これらに限らず多様な選択肢から各クラブが選ぶことになりますが、ロータリーとしては、各クラブが次世代のリーダーシップ養成に一層注力するように期待しています。
地区では、各クラブからより広くRYLAに参加頂けるように工夫したいと考えていますので、クラブから奮ってご参加をお願い致します。